総合型選抜の準備を始める際、多くの高校生や保護者の方が直面する最大の不安があります。それは、「うちの子には、特別な実績が何もない」「アピールできることがない」という悩みです。
しかし、安心してください。実は、この「何もない」という状況は、総合型選抜において弱点ではありません。むしろ、大きな可能性を持った出発点になり得るのです。

立派な実績を持つ子ほど陥る「罠」
部活で準優勝した、成績が常にトップだった、華々しい留学経験がある……。こうした立派な実績を持つ子ほど、志望理由書では油断できません。
なぜなら、強い実績を持っていると、どうしてもそれに頼った文章を書いてしまうからです。その結果、「一生懸命頑張りました」「リーダーシップを学びました」といった、誰もが思いつくようなありきたりな内容になりがちです。
面接官は何百枚もの書類を読みます。実績の大きさ比べになってしまえば、必ず上には上がおり、結果として埋もれてしまいます。
分かりやすい本筋の経験は、誰にでも書けるからこそ危険なのです。
「何もない」からこそ、ありきたりを避けられる
一方で「特別な実績がない」と考えているあなたは、まだありきたりなことを書いていない状態です。実績に頼ることができないからこそ、最初から「目立たない経験の中」を探すしかありません。
それはつまり、他の受験生や学校の先生が「こんなの役に立たない」と見落としてしまうような場所を、最初からじっくり見つめることができるということです。
この「本筋を外して、脇を拾う」ことこそが、他の誰とも違う、あなただけの志望理由書を生み出す強い武器になります。
総合型選抜のために、無理をして新しい実績を作る必要はありません。必要なのは、すでにある経験を拾い直すことです。

些細な経験が「強力な志望理由」に変わる瞬間
ここで、一つの例を紹介しましょう。
ある看護学部を志望する生徒は、「昔ちょっと入院したことがある。それだけで、特にアピールできる実績はない」と、自分の経験を流そうとしました。
しかし、その時の話をよくよく聞いてみると、彼女はある光景をしっかり“見て”いたのです。
それは、入院中、隣のベッドにいた重い病気の子に対して、看護師さんが医療処置とは全く関係のない雑談をして、その子を笑わせていたという一場面でした。
本人が「どうでもいい」と見過ごしかけたこの記憶が、対話を通じて次のような志望理由の核に変わりました。
「病気を治すことと、患者のそばにいて安心させることは違う。自分は、後者のような看護をやりたい」
この志望理由には、立派な実績や表彰歴は一つも使われていません。
しかし、実績をひけらかすだけの文章よりも、よほど面接官の心を打つ「その子にしか書けない中身」になっています。
あなたの中に、もう価値はある
「うちの子には書くことがない」と諦める必要はありません。
書くことがないのではなく、まだ自分の経験の「脇」を拾っていないだけです。あなたの中には、大学の面接官を納得させるだけの価値ある経験が、すでに眠っています。
坪井英語塾では、対話を通じて、本人が当たり前だと捨てようとしている経験から「あなただけの核」を掘り起こします。
まずは安心して、自分の中にある些細な記憶と向き合うことから始めてみてください。